第46回「伝わる話し方の心得 総まとめ」

まとめ

今回は、これまでお話ししてきた「ビジネスの現場でしっかり伝えるためのテクニック」を、改めて総まとめしておきますね。

ビジネスの現場では、「あなたがどう見えるか」ということは問題ではありません。中身がちゃんと伝わって聞き手の心を動かせるかが最も大切なことです。

キーワードは「聞き手第一主義」。聞いている人にとって①「理解しやすい」②「聞きやすい」③「思わず引きつけられて眠くならない」ことがポイントでした。それぞれのコツを簡単に復習しましょう。

 ①「理解しやすい」伝え方のコツ

キーワードは「シンプルに」。聞いてわかりやすい話し方にするために最も大切なのは、「話すときの文章は一文をできる限り短く」することです。

接続語で文をつながず、一文には述語は一つだけにする。特にキーワードのところは、余計な言葉を周りに置かないようにします。キーワードのみの体言止めで一文にするのも一案です。

文章だけでなく、構成もシンプルにしましょう。結論や全体像、概要など、「まず言いたいことをざっくり説明する」ことを心がけます。理由や詳細、具体例などは、後で言えばいいのです。

話す内容が浮かんだのでなんとなく話し始めたら、とりとめがなくなったという経験がある方も多いと思います。話す内容の順番、構成が決まらないまま話せば、そうなるのは当然です。

構成や言いたいことがはっきり決まらないうちは、「黙って考える勇気」も必要ですよ。

(第4回「話す文章はなるべく短く」第5回「文を長くしないために」第6回「無駄な言葉を減らそう」参照)

 ②「聞きやすい」伝え方のコツ

最も大切なのは、聞いている人が「聞き取れる」こと。美声でなくても問題ありません。滑舌が良くないという自覚があるのなら、「ゆっくりはっきり」話すようにすればいいだけのことです。

次に大切なのは「黙る」こと。聞いている人があなたの話の中身を理解し、腹に落とすまでの時間を待ってあげるようにするのです。早く次の話をしたいという気持ちをおさえ、積極的に黙るのです。自分ばかり気持ちのいいマシンガントークは厳禁です。

最後に必要なのは、「えーと」「あのー」など無意識に出ている、意味のないつなぎの言葉を我慢することです。こうした言葉は、机に散らかっている使わない書類のようなもの。生産性を上げるには、余計なものをなくすようにしましょう。

(第7回「話した言葉を見える化する」第8回「黙ることを恐れない」第9回「立て板に氷水」にご用心!参照)

 ③「思わず引きつけられて眠くならない」伝え方のコツ

キーワードは「チェンジ・オブ・ペース」。言い換えれば、一本調子にならないように工夫することです。大切な言葉は、ゆっくり、大きく、前後に間をあけるなどの変化をつけないと聞いている人の頭には残りません。(第45回「プロのテクニック〜チェンジ・オブ・ペースとメタ認知」 参照)

話の中身もロジックで押し続けるのではなく、合間に少し例え話を入れる。いい話や泣ける話を続けるのでなく、少し笑える一言を挟むなど、緊張と緩和のバランスにも注意しましょう。

最後に。こうしたノウハウをどんなに知っていても、身につくことはありません。大切なのは、まず、自分の話す姿を録画(録音)して自分のクセや何が足りないのかをしっかり把握すること。(第2回「録音して、自分の話し方に向き合いましょう」)

「キーワードだけで話せるよ!」という方もいるかもしれませんが、それはただ話せているだけで、伝わっているかどうかは別問題。しっかりと伝わる原稿をまずは作ってみる。そして原稿が棒読みにならないように、何度も口に出して内容を自分のものにしてから本番に臨む。面倒でも、この方法が最終的にはスキルアップに最も効果的です。私が保証します!

この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。
こうしてまよめてしまうと、なんだかあっさりしていますよね。「本当にこれだけ?」という方もいるかも知れません。しかし、これら一つ一つをしっかり実践することは実はとても難しいことです。理屈を知ったところでゴルフがうまくならないのと同じこと。
まずは体で覚える。何回も失敗しながら身につける。時間はかかりますが、これしかないんです。少しずつでいいので頑張ってくださいね。
 

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