
議論を見せる様々なイベントの中でよく見るのが、数名の発表者と1人の司会進行役で行われるパネルディスカッション。
厳しいことをいいますが、私はあまり面白いものに出会ったことがありません。
連載をご覧の方にも、こんなディスカッションの進行役を頼まれることがある方もいらっしゃると思います。
今回は、パネルディスカッションを成功させる私なりのコツをお伝えします。キーワードは「準備」「勇気」「感謝」です。
ディスカッションを盛り上げる準備
まず、ディスカッションの構成からお話ししますね。
退屈なディスカッションでありがちなのは、最初にパネリストが与えられたテーマについての見解を自身の立場から5分ほど話す。
次に、今回のテーマに関連した質問をパネリストに対して進行役が投げかけ、それをパネリスト全員が一方通行で順に回答していく。
残り10分ほどになったら観客から質問を受け付ける、というものです。
これだと、まず間違いなく退屈になりますね。
パネリスト同士の白熱した議論が「用意」されていないからです。
もちろん、たまたま議論が盛り上がることもあると思います。しかし、多くは「いろんな話を聞いたね」で、あっさり終わってしまうことが多いです。
そのためには、進行役(もしくは主催者)が事前に、各パネリストの主張をあらかじめ把握し、彼らの見解がぶつかりそうな点を出来るだけ事前に見つけておいて、それに従って質問を組み立てておくようにしましょう。
もちろん、その場で話を聞きながら議論のポイントを的確に把握できる人は不要ですが、私も含め、多くの人はそうではないと思います。議論を盛り上げたければ、まずは「白熱する論点を事前に準備する」ことです。
ずけずけと仕切る勇気
次は、「進行役の使命」についてです。
進行役は、「コーディネーター」「モデレーター」「ファシリテーター」と呼ばれることもあるようですが、その使命は同じ。「観客目線に徹して」議論を回すことです。「長い」「つまらない」「理解できない」と観客に思われては、使命は果たせていないことになります。
そうならないためには、パネリストをコントロールする、時には憎まれ役を買って出る「勇気」を持つことです。
コントロールするためには、事前打ち合わせと議論本番で「約束事を宣言しておく」ことです。
一番重要なのは、長々とした発言を避けるため、「発言時間は2分まで」など時間についての約束。
次に、観衆にとって内容が難解だったり、話の趣旨が不明な場合は、割り込んで簡潔な説明を促すことがある、という進行上の強権発動についての約束。
もちろんQ&Aを行う場合は、観客にも約束事を伝えます。
例えば、「本日は貴重なお話をありがとうございます」などのお礼や、自説や感想を長々と述べず、速やかに端的な質問をする、というようなことです。
奥ゆかしく、波風立てたくないという方が多いとは思います。短い時間で内容の濃い議論をするためには、必要なことです。ぜひ「ずけずけと仕切る勇気」を持ってください。
こんなことをすると、時には憎まれ役になるかもしれません。でも大丈夫!そんな時こそ「感謝の言葉を忘れない」ようにするのです。
「端的にまとめてくださり、ありがとうございます。」「お陰で多くの発言・御意見をうかがえました」。議論があまりに白熱した時は「包み隠さない、本音のご意見、お越しの皆さんにもしっかり伝わったと思います。皆さんいかがですか?」など、観客の拍手によって労えば、発言した方も悪い気はしないはずです。ぜひ、お試しください!
この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。

