第5回「文を長くしないために」

「録音して自分の話し方に向き合いましょう」という話から始めたこの連載。その後、録音したものを聞き直すときの注意点を一つひとつお話ししています。ここまでは、「早口にならないように気をつける」「話す文章は短くする」の2点をお伝えしてきました。

文が長くなってしまう原因とは

 今回のテーマは、文を長くしないためのポイントです。まず、文が長くなってしまう原因を考えてみましょう。 自分が話しているときの心の中を思い出してみてください。

私のところにトレーニングに来る方の多くは、「ふつうに話していると『なんとなく』文が長くなってしまうんですよね」と言います。

気持ちはわかりますよ。意識しないと私もそうですから。ふだんの会話はそれでいいと思います。問題はビジネスでの会話。時間の限られている中、できる限り端的に話すこと。これは「ビジネスマナー」と言ってもいいですよね。

「なんとなく」文が長くなってしまう理由

 さて、「なんとなく」の部分を少し考えてみましょう。例えば、こんなやりとり。

係長「今日2時から会議の予定だったよね?予定通り実施するの?」 部下「いや、あの~、実は今日なんですけど~、決裁者である部長に急な出張が入ってしまって不在でして~、一応他のメンバーは資料もそろえて準備はできているんですけどぉ、決裁者がいない中でやっていいのかなぁと…」

こんな風に部下に答えられると、気の短い係長なら「で、やるの?やらないの?!」とイライラしてしまうかもしれません。

話が伝わらない
 
 部下が係長に伝えたかったことをまとめると、こうです。
「今日予定していた会議は、決裁者の部長が急な出張で不在になったので中止すべきか、それとも、資料が準備できているので決裁するしないは別にして開催すべきか、判断がつきかねている。」
書き言葉だとこのように端的に整理して伝えられますよね。しかし話し言葉ではなかなかそうはいきません。
色んな情報がいっぺんに頭に浮かぶものの、それを目の前の人に早く伝えなきゃというプレッシャーから、しっかり整理する前に「とりあえず話し始めてしまう」。
こんなところではないでしょうか?するとどうなるか。言いたいことが数珠つなぎになって、一つの文が長くなってしまうのです。

文を長くしないためには、どうすればいいか

では、どうすればいいのか。「一度に全部話そうと思わない。一番簡単なことから話す。」これが、私なりの方法です。
先ほどの係長と部下のやりとりでは、係長は「会議はやるのか、やらないのか」を聞いているのですから、まずその点だけ答えるのです。
「判断できず困っています」
これだけです。ほかに言いたくなるのはわかりますが、まずはこれだけ。
そのあと「決裁者がいないんです」「決裁者は部長です」「急な出張が入ったんです」「資料はそろっています」「話し合いはできます」と情報を分けて伝えるのです。
 
情報を伝える順番にもコツはあるのですが、それは別の機会にお伝えします。
今は、まず「焦ってなんとなく話し始めない」「全部伝えようとせず、一番大切なことだけ話す」「残りの情報は一つひとつ分けて付け加えていく」ということを覚えておいてくださいね。

この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。


とはいえ、上司などエラい人を前にすると焦ってしまうんだよね~。。。わかります。そんなときはこう考えてはいかがですか?「整理されていない話を聞かされる相手はどう思うだろう?」と。きっとイヤだろうな、というのは想像がつきますよね。そうなんです。時間をとってでも話を整理してから話す、というのは聞き手のためになるのです。自信を持って、言いたいことを整理する時間をとるようにしてみませんか?

 

松本和也松本和也(まつもと・かずや) / 音声表現コンサルタント・ナレーター・司会・ファシリテーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」「NHKスペシャル(多数)」「大河ドラマ『北条時宗』・木曜時代劇『陽炎の辻1/2/3』」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況に加え、報道番組のキャスターなどアナウンサーとしてあらゆるジャンルの仕事を経験した。株式会社 青二プロダクション所属

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