今回はここまでの総仕上げ。しかもスパルタ式です。どうかついてきてくださいね。
その方法とは…「録画・録音したものを『一言一句』文字に書き出す」。それだけです。
え~!?なんて言わないでくださいね。手間はかかりますが効果は絶大です。といっても一年毎日続ける必要はありません。まずは一回チャレンジしてみてほしいのです。
私がアドバイスをしている皆さんも、この方法で見違えるように進歩しているんです!
やり方は簡単。自身の話している様子を録音したものを聞きながら、「あの~」「え~と」「まぁ、」などのつなぎの言葉もひとことも漏らさず、文字に起こしていってください。「。」も「、」も書き出しますが、録音を聞いて間(ま)が不十分なら「。」「、」は打たず、そのまま文を続けて書いていきましょう。時間もかかりますし、疲れる作業ですが頑張って。すると何が起こるか。
あなたの話が伝わりにくいなと思っていた原因がはっきりと可視化できるのです。
可視化の際のチェックポイント
まず、録音を聞いて書き出す過程で、聞き取りにくいところがあると思います。そうしたところの多くは早口過ぎるポイントです。話のどの部分で早口になるのか、という傾向を知ることができます。
次に確認するのは、文の長さです。おおよその目安ですが、一文が25文字よりも多い場合は、聞いていて「長い文だなぁ。いつ終わるんだ?」と思われる恐れがあります。文字に起こした自分の話の中から、長い文章をチェックします。お勧めは蛍光ペンなどで長い文をはっきりわかるようにマークしていくやり方です。これで、イヤでも自分の文の長さを、自覚できます。
文章が長くなる原因とは
さらに、文が長くなる原因をチェックします。まずは無駄な言葉。「え~と」「あのー」「まー」などの間投詞以外に、「基本的に」「逆に」などの無意味な口癖はないか確認します。
もちろん、前回お話しした「~ですけれどもぉ」「~なんですがぁ」「~でしてぇ」「~はですねぇ」などの文を無用につなげる言葉、「~につきましてはぁ」「~でございますがぁ」などこれから話す項目を出すためだけに使われるつなぎ言葉、「~したいと思います」「~かなと考えています」などの余分な婉曲表現、「~でございます」「~させていただきます」などの過剰な丁寧表現…。
このような、文が長くなる原因となる「無意識の言葉の癖」を洗い出し、それが「○分の間に○回出てきたか」というレベルまでチェックしてみましょう。
自分の変化がわかる時
どうですか?聞いているだけで疲れますよね。でも、この作業をするのとしないのとでは、改善のスピードが全く違うのです。
変化がわかるのは、次にあなたが人前で話すとき。徹底的に自分の話し方の癖に向き合っていますので、自分が話している最中、チェックした自分の話し癖を思わず口に出すと、今まで気づかなかったものが「あ!やってしまった!」となります。最初はかえって話し方がギクシャクしますが、そこを我慢して続けてください。いつの間にか無駄な言葉が減り、文が短くなっていきます!
話し方改善に王道なし。ぜひ実行してみてください!
この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。
この方法、私が行っているレッスンの中で最もきつくて最も効果がある方法です。お客様にお願いすると、「えー」とあからさまにいやがる方が多いです。でもそこは心を鬼にして、「いえ、必ずやってください!」と言っています。その次のレッスンでその方が必ずおっしゃることは「ここまでわかりにくい話し方をしていたとは思っていませんでした」というもの。特に、自分で話すのに自信がある方ほどショックは大きいようです。文の長さや話し方のクセ以外にも、そもそも実は論理的でなかったり、言うべき内容が入っていなかったりといたこともわかります。総理大臣から一般の方まで、誰もが一度は真摯にご自分が何を、どんな風に話しているかを書き出して見つめ直すようにすれば、日本のパブリックスピーキングは大きく変わると思うんですがね。。。