第47回(最終回)『口べた上等』『ことばの働き方改革を』

口ベタ

いよいよ最終回です。最後に皆さんにお伝えしたいことがあります。それは「口べたなのは悪いことではない」ということです。

もう少し丁寧に言うと、「自分が口べただ」と思うのなら、ちゃんと対策をすれば、何の問題もないということです。危険なのは、自分はそこそこ話せていると思い込んで、聞き手が理解できているかに無関心な人のほうです。

聞き手は、話し方がスムーズかどうかなんて気にしていない

相手にわかってもらえるように、話す内容を構成したり、短い文で原稿を作ったりする。スムーズに聞いてもらえるように、口に出して何度も練習する。それだけやって「あなたヘタだねぇ」と言われたら、もう仕方ないと開き直れるでしょう。

一番もったいないのは、「ヘタだと思われたくない」と話すことから逃げ回ることです。是非知ってもらいたい、伝えたい話があるのなら、勇気を持って話しましょう。自分が思ったほど、聞いている人は、あなたが話し方がスムーズかどうかなんて気にしていないものですよ。

私がこう思えるようになったのは、NHKにいた頃に担当した「英語でしゃべらナイト」の経験があったからです。

受験勉強で英語は得意な方でしたが、ご存じのように話すのは別です。テレビでヘタくそな英語を話すのは本当に恥ずかしかったのですが、撮影は否応なく始まってしまうので、「なんとかわかってもらいたい」と一生懸命話すしかありません。

すると、誰も「あなた英語ヘタですね」などと言う人がいないことに、気づいたのです。気にしていたのは自分だけ。聞いている人にわかってもらうため精一杯努力する。それができればいいと思ったのです。

話し方も、地道な努力で少しずつ上達していく

色々なテクニックを連載の中でお伝えしてきました。多くの本に書かれているような、「たった1分で印象が変わる」「あなたの人生を変える魔法のフレーズ」のようなものはほとんどなく、地道な練習を要するものばかりで、残念に思った方もいるかもしれません。

しかし、20年以上話すことを生業としてきた結論は、「地道に努力し、少しずつ上達していく」のは、話すことでも同じだ、ということでした。

どうか、口べただと卑下しないでください。少しずつでいいので、わかってもらえるように工夫しよう。それだけを考えてくださいね。

「ことばの働き方改革」で生産性向上を

そして、もう一つ。私は皆さんに、ぜひ「ことばの働き方改革」も考えてほしいと思っています。

労働時間と同じように、コミュニケーション面でも無駄な時間はカットして、生産性を上げるべきです。

早口過ぎたり、やたらと長い文章で、全く中身が頭に入ってこないプレゼンテーション。情報過多でどこを見ていいかわからないスライド。結論も出せず議論とも呼べないような会議。。。

まさに時間泥棒です。

こうしたことを無くすのに大きな力となるのが、連載でお伝えしてきた「端的にわかりやすく伝える」様々な方法だと確信しています。是非復習をお願いします。

連載の最後に

そこで最後に、復習に役立つ動画のお知らせです。2020年1月から、YouTubeチャンネルを公開いたしました。コンテンツはもちろんわかりやすく伝える方法。もちろん堅苦しくなく、楽しくお伝えしていくつもりです。

YouTubeチャンネル名は『元NHKアナウンサー松本和也のChubby Road Studios』です。是非動画を見て、復習にお役立てください。 最後までお読み頂き、ありがとうございました!

この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。
これで最終回です。とはいえ、まだまだ新たに書きたくなることが出てくると思います。その時はこのコラムに書いていきますので、ぜひご覧くださいね。ではひとまずお別れです。
 
松本和也松本和也(まつもと・かずや) / 音声表現コンサルタント・ナレーター・司会・ファシリテーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」「NHKスペシャル(多数)」「大河ドラマ『北条時宗』・木曜時代劇『陽炎の辻1/2/3』」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況に加え、報道番組のキャスターなどアナウンサーとしてあらゆるジャンルの仕事を経験した。株式会社 青二プロダクション所属

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