秋の決算発表の時期、様々な会社の社長さんから「どうすれば質疑応答をうまくできるか」という相談をたくさん頂きました。
「質問されただけで焦る」「答えているうちに自分で何を話しているのかわからなくなってしまう」などのお悩みでした。質疑応答は、決算発表でなくても日常のビジネスの現場でも行われるもの。
そこで今回は、落ち着いて質疑応答するための具体的な方法をご紹介しますね。
大きな流れは、次の通りです。①「質問内容をメモする」②「すぐに答え始めず、答えを構成する」③「時間を稼ぐ」④「答えははっきり。フォローも忘れず」。
では、一つ一つ、ご説明しましょう。
焦って余計なことを話さず、全体構成を作る
質疑応答の際に最も気をつけなければいけないのは、焦って余計な言葉を口走ってしまうこと。そのためには、①「質問内容をメモする」ことから始めます。自分が答えなくてはいけないことを可視化しておけば、余計なことを言ってしまうリスクが減らせます。
もう一つの理由は、質問者によっては、自分の意見や仮定の話などを質問とごちゃ混ぜにしながら話す人も少なからずいるため、彼らの質問を整理し、時には質問者に確認するためにも必要だからです。
次は、②「すぐに答え始めず、答えを構成する」。どんな話をどの順番で答えるか、全体の設計図を決めておくのです。1.結論、2.その根拠、3.具体例。こうした要素をこの順番で用意できればたいていの質問には答えられます。問題はその構成が作れるかどうか、ですよね。
時間を稼ぐつなぎ言葉
そこで、③「時間稼ぎ」をします。時間稼ぎのためには、つなぎの言葉が必要です。
一つは質問者をほめる言葉。典型的なのは「いい質問ですね」です。これ、本当にいい質問の時はもちろん、自分にとって答えにくい質問や、都合の悪い質問のときにでも使えます。
もちろん「いやぁ、難しい質問ですね。これは慎重にしっかり答えないと」などもいいですよ。質問者の中には、あなたを追い詰めたい、やり込めたいと思っている人もいます。そうした彼らの欲求を、ほめたり、困ってあげたりすることで満たしてあげるのです。
「私があなたの立場なら、同じように思ったと思います」などと言って、相手に「お、わかってくれているじゃない」と思わせて相手の戦意を弱めたり、一度相手側の立場に立ってあげているというアリバイ作りにもなります。
こんな答えをしながら手元では、答える際のキーワードを書き、キーワードに番号を振って、②の構成を作るようにします。質問のメモを書く人はいますが、私はこの答えのざっくりしたサマリーが書けるかどうかが、質疑応答のカギだと考えます。
結論ははっきり、早めに
最後に④「答えははっきり。フォローも忘れず」。結論ははっきりわかりやすく、早めに伝えるましょう。これが遅いと、質問者はイライラします。
曖昧な結論の時ほど答えは最後に回したくなる気持ちもわかります。しかし、隠したい、言いたくないという思いは、はっきりと聞き手に伝わります。それが伝わると、質問者はさらに追っかけてきて傷が深くなります。そうならないためにも勇気を持って結論を早めに伝えるようにしましょう。
また、厳しい質問ほど答えるときの表情や声のトーンは厳しくなりがちです。最後に「有意義な質問をしてくださり、ありがとうございました」などと穏やかな声で感謝の言葉などでフォローしておきます。こうすることで、質問者のさらにむち打とうという気持ちはある程度おさえられると思います。
この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。
私の緊張しすぎるのを防ぐ方法は、この連載でも以前少し書きましたが、「完璧にしなければ」「うまくきりぬけなければ」と自分で自分を追い込まないようにすることだと思っています。