第23回の連載で、「伝わるプレゼンをしたいのなら、話すのが得意でもちゃんと原稿を作りましょう」とお伝えしました。
とはいえ、「原稿やメモを見ながら話している姿は恥ずかしい」とおっしゃる方も結構いらっしゃるんですよね。
そこで今回は、「カッコ悪く見えない原稿の見方」をご紹介します。
原稿を読みながら話すのはカッコ悪い?
いきなりですみません。私自身は、原稿を読むこと自体は決して悪くないと思うのです。こんな場面、見たことありませんか?
結婚披露宴。新郎のお父さんの締めの挨拶。お父さんはおもむろに懐から便箋を取り出して言います。
「大変緊張しておりますので、事前にメモを書いて参りました。お許しください」
これってかっこ悪いでしょうか?微笑ましいことはあっても、不快には思いませんよね。ちゃんと伝えたい。だからメモを作ってきた。むしろ誠実な姿勢で、なんの問題もありません。
しかし、ビジネスなどの場面では、メモや原稿をがっつり読んでいると、なんとなく頼りなく見えるのではないか。そう思われるのはよくわかります。なぜそう見えるのか、少し考えてみてください。
メモがないと話せない→内容がしっかりわかっていない→頼りない。そんな風に思われる恐れがあるのですよね。だったら、ちゃんと内容がわかっているように見えれば、メモを見てもいいのではないでしょうか。どうすればそれができるのか。明らかなのは、手元のメモにずっと目を落としていると、中身が頭に入っていないように見えるということ。要は、メモをずっと見ていなければいいのです。正攻法は、何度も口に出して暗記できるレベルまで練習すること。
原稿を見ても、内容がわかっているように見られる方法
しかしいくら暗記していても、本番は緊張して中身が頭から飛んでしまう。そんな方にお勧めなのは、「中身を忘れるかもしれない」という不安がある時は、堂々と原稿を見ること。ただし、「、」「。」などの文の切れ目のところでは、必ず聞いている人の顔をしっかり見るようにして「あなたに伝えていますよ」という「姿勢」を見せることです。これだったらできるのではないでしょうか?
私もアナウンサーだった頃、緊急で入ってきたニュースの時は、原稿をしっかり見ていましたが、同じように切れ目のところで前を向くようにしていました。こうすると、「ただ読み上げる」ことなく「聞いている人に語り掛ける」という意識付けができるのです。原稿は見ても問題なし。ただし、読み上げてしまわず、語り掛けることを忘れない。これがポイントです。
また、総理や大統領が会見などで使っている、原稿をモニターなどに映して読む「プロンプター」というシステム。大きなカンファレンスのプレゼンで使う、という社長さんもいるのではないでしょうか。あのプロンプターの見方にもコツがあります。プロンプターを見ているときの顔に注意してほしいのです。それは、プロンプターの文字を読んでいる時も、その顔は観衆に見られているということ。文字をじっと見ると、普通は真顔になります。観衆に話しかけているときは笑顔で、プロンプターを見るときは急に真顔になると、見ているほうは何か違和感を感じてしまいますよね。
メモもプロンプターも、読むことばかりに集中し過ぎず、観衆の目を意識しながら話すことを忘れないようにしてくださいね。
この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。