ラグビー・ワールドカップ、8強入りを果たした日本代表のチームスローガンは「ワンチーム」でしたよね。
実は、企業を代表して行うプレゼンテーションも、やはりチーム一丸となって行う必要があります。
今回は、私が最近、企業からの依頼を受けると必ず最初にしている話をご紹介しますね。
社長の話がわかりにくくなる原因
チーム一丸と聞いて「そんなの当たり前だ」と思った方も多いと思います。しかし、当たり前のことが、実際には当たり前にできないことは多いもの。
私は、様々な企業をお客様に迎え、プレゼンテーションを作りあげていくサポートをしてきましたが、ワンチームになることは本当に難しいという場面を見てきました。
例えば、決算発表会や会社説明会のプレゼン。
多くの企業(特に大企業)では、様々な部署から「こういうことを言ってほしい」という意見を集め、最終的にそれらを「えいや」とまとめる形でできあがることがほとんどです。
そのため、誰に対するアピールだかわからない長々とした文章、本当に必要があるのかと思うような数値やグラフなどのデータの連発で、内容てんこ盛りになってしまいがちです。
そうして出来あがった原稿を渡されるのが社長です。社長は一生懸命読みますが、多くの場合文章が長くて読みにくく、内容もスライドも情報量が多過ぎて、結局聞いている人に伝わらない。
その結果、原稿を作った社員や会の出席者から「社長の話、わかりにくいんだよねぇ」と言われてしまう。
ある社長に「こんなに難しい原稿、よく読みましたね。もっと読みやすいものにしてほしいって言わないんですか?」と聞いたら、「皆が頑張って作ってくれたものだから、僕も頑張るしかないんだよね」と言われたこともあります。これでいいのでしょうか?
聞き手のことを考えている人がいるか
プレゼンの目的は、聞き手を納得させること、心を動かすことです。
今ご紹介したようなやり方は、社内の安定ははかれても、プレゼンの目的を達せられないのは自明です。
プレゼンの内容をまとめる役割の方、経営企画・広報・秘書室などの部署の方は、バランスをとってまとめることに必死。しゃべってほしい内容を彼らに送る部署は、どれだけ自分たちの言いたい事を少しでも多く盛り込んでもらえるかに必死。社長はできあがったものを話すのに必死。。。
そうです。一歩引いた視点で「聞き手のことを考えている人」がいないのです。
トップダウンの傾向の強い会社や規模の小さい会社で、社長に聞き手重視の考え方があれば、プレゼンもわかりやすくなることが多いです。
プレゼンをわかりやすくするには
しかし、そうでない場合はどうすべきか。私の考えはこうです。
まずは、ワンチームになるべく、各部署の代表が顔をそろえ、意思の統一を図ることから始める。その意思とは「会社の価値を上げるために協力する。自部署のエゴはおさえる」ということです。
次に各部署の言いたいことを互いに理解すること。そのときに忖度はいりません。お互いに思うことを素直に話し、違いを認め合うことから始め、内容を磨いていく。ラグビー日本代表のように家族を犠牲にして何百日も合宿する必要もありません。
こうしてできあがった原稿は、これまでの寄せ集めの情報から、日本代表のスクラムのように力強く心に迫ってくるものになっているはずです。こんな原稿を渡された社長は、きっと楽々トライを決めてくれると思いますよ。
この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。