はじめまして、松本和也です。私は2016年にNHKを退職してから、主にビジネスパーソン向けの研修や社長・役員向けのスピーチコンサルタントをしています。
これまで本当に多くの皆さんが「話し方」についてお悩みなのを見てきました。そのお悩みの多くは、元アナウンサーの私からすると、「そんな誤解をしているの?」「そんなことにとらわれていたの?」「なんでそんな遠回りをしているの?」と感じるものでした。
そこで、私が実際に番組の司会やナレーションの中で当たり前のこととして実践してきたノウハウをお伝えすると、「そんなことが伝わらない原因だったなんて…」と驚かれてばかりで、私のほうがビックリしています。
みんなが誤解している話し方とは?
たとえば、話し方と聞くと、「滑舌と発声こそ大切!」と思い込んでいる方のあまりにも多いこと!もちろんアナウンサーや役者、声楽家になりたいのならそこを重視するのもわかります。もちろん、発声や滑舌が良くなったら、あなたの「印象」は良くなるかもしれません。しかし、印象だけでビジネスの成否が決まることはあるでしょうか。
論理性こそ大事だ。結論を先に、根拠と具体例を的確に入れればいいのだ、という方もいますよね。確かにそうなのですが、そういう方の話がいつも本当にわかりやすいか、聞きやすいかというのも怪しい場合もあるような気がします。例えば論理やレポートの達人である経営コンサルタント畑の方の話が、速すぎたり、細かすぎたり、難解すぎたりして、聞いていてつらかったということはありませんか?
わかりやすい話し方の学び方
では、どうすればいいのでしょうか?それには、まず「話しことばの特性」を知ること。小学校から大学受験まで、作文や筆記試験のノウハウは積んできていても、「話しことば」を体系的に学んだ方はまずいないと思います。どういう内容を用意し、どんな文章構成で、どんな文で伝えれば、相手が理解しやすいのかを知ることからはじめましょう。
その後は、音声、音声以外の表現上の工夫をします。決して「美声」や「滑舌をよくする」のではありません。自分の印象を良くするためでなく、「相手が聞き取りやすい」ことを主眼に置いて、様々な音声上の配慮をするのです。もちろん音声以外の工夫や、伝える上での心構えも大切です。このブログでは、実際に放送の中で私が試して効果があったもの、トレーニングを受けた方が試して効果があったものを、ひとつひとつお伝えして行きます。
このメソッドを学ぶ上での注意点
ただし読んでいただく上で注意点が2つあります。1つ目に、最初から全てをマスターしようとしないこと。音声表現が得意な方、言葉の選び方が上手な方など人それぞれに得意不得意は違います。得意なことを優先し、効果が実感できるものを楽しんでやるようにしてみてください。
2つ目。あまりに変わりすぎるので最初はギクシャクして聞こえるため、周りの方から前のほうが良かったという反応が来る場合があります。ここはゴルフのレッスンを思い出してください。最初、レッスンプロからスイングを習った時、前より一時的に下手になりませんでしたか?自己流を一度リセットするので、どうしても最初は一時的に苦しい時間が出てしまうのです。ここ、頑張りどころです。
このメソッドは「効きすぎ」にも注意してください。伝統的な日本の組織で、このメソッドを使うと間違いなく浮きます。「浮いてしまうのが怖い」「目立ちたくはない」という方はお読みにならないほうがいいかもしれません。「浮いたって構わない、自分には伝えたいことがあるんだから」という方に、強力な武器を授けます。
さあ、楽しみながら一緒に頑張っていきましょう!
この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。
皆さんにまず言いたいのは、「人前での話し方」なんて学校で教えてもらったことはほとんどないはず(私もありません)ですから、うまく話せなくて当たり前だという意識を持っていただきたいということです。要は、いきなりうまくなろうとせず、ひとつひとつの細かいことを積み重ねれば良いのだと開き直ってください。これからのブログでお伝えすることを、だまされたと思って続けてみてください。必ず成果が出ますからね!
ブログのほかに動画でも伝え方のメソッドをお伝えしています。第1回の動画はこちらです。文字で伝わりにくい部分は音声で聞くとわかりやすいと思います。こちらもご覧くださいね。