プレゼンテーションで聞き手を「グッと引きつける」ために大切なこと。それは「間(ま)」を意識的に作り出し、引きつける手段として積極的に活用することです。
「間」というと、「話すときの間」と考えがちですが、それだけではありません。動き、スライドの使い方でも同様に「間」の使いこなしが重要になってきます。
今回は様々な「間」の活用法をご紹介しますね。
伝えたい話・キーワードの前に「たっぷり黙る」
まずは、話し方から。特にベンチャー関係、IT関係の方で多いのが、自社の優位性やビジョンなどを自信満々に、マシンガンのようにしゃべりまくることが多い気がします。
確かに聞き手を圧倒できるでしょう。ご自身でも今日も思う存分伝えられたという充実感を感じるかもしれません。でも、私としてはもったいないなぁと思います。
聞き手にとっては話の内容を反芻したり、自身の経験に照らし合わせて「なるほど」と納得する時間を与えられず、結果的に心の奥までことばが届かないことにつながるからです。
何より、ついていくのに必死で、聞いていて疲れますよね。そうならないためには、伝えたい話・キーワードの前に「たっぷり黙る」こと。
私の経験上「間をとろう」では不十分なことが多いです。「今、自分は黙ってるなぁ」と感じるくらいでちょうど。それくらいやれば、聞き手も「なるほどねぇ。」「次に何を言うんだろう?」と心の中であなたのことばに引きつけられていくはずです。
次の話へとつなぐ「間」をとるために、歩く
次に、動き。「Steve Jobsのように格好良く歩きながら話すには、どうしたらいいですか?」と質問を受けることがあります。私は「歩くことよりもしっかり立ち止まって話すことのほうが大切ですよ」と答えています。
確かに、彼は歩きながら話しているイメージがありますよね。しかしずっと歩いているわけではありません。私の見たところ、様々なエピソードや場面転換の時には歩きながら、観客に大切なメッセージを訴えるときは、しっかり立ち止まって話していることが多いです。
これも「間」の考え方を取り入れると理解できると思います。
つまり、ずっと同じところで立ったまま話すと、見ていてなんだか退屈です。そこで視覚的に変化を与えるために歩く。それが「間」となって、聞いている人の集中力が落ちるのを防いでいるのです。
歩くのは、一つの大事な話から次の大事な話へとつなぐ「間」をとるため。大切な話では立ち止まる。そう覚えておいて間違いはないと思います。
インパクトを与えるため、スライドの切り替えで間を作る
最後にスライド。スライドの「切り替えのタイミング」で「間」を活用するのです。
「(スライドを切り替えて)次にこちらは~」とあっさりコメントを始めていないでしょうか?もったいないです。
観衆はスライドが切り替わると「何が書いてあるのかな?」と関心を引かれるもの。
そこにさらにインパクトを与えるため、切り替える直前に「何がわかったと思いますか?こちらです!(スライド切り替え)」のように、「次を見たい!」と思わせる言葉で「間」を作って、スライドを切り替えるのです。
「驚きの結果があったんです。こちら!」(切り替え。スライドにはキーワードがひとこと)キーワードをゆったり読み上げる。テレビでのフリップを使ったプレゼンがまさにこの形です。
「間」を作って引きつける。そして話す。ぜひチャレンジしてみてくださいね。
この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。