第36回「プレゼン本番でのポイント」

プレゼンテーション

いよいよプレゼンテーション本番の日。当日の動きや気持ちの持ち方など、私なりのオススメの方法を時間経過とともにご紹介します。

早めに「場に慣れる」

まず大切なのは、プレゼン会場にはとにかく早めに到着しておくことです。

実際にプレゼンする演台などに行くことができるなら、オーディエンスがいることを想定して実際にそこで声を出してみます。これは、私がNHKのど自慢などで実際に行っていたことです。同じ番組でも会場が変わると自分の声の聞こえ方も変わり、無用な緊張へとつながる恐れがあるからです。

マイクが使えるのなら試しておいてください。最近はマイクも有線、ワイヤレス、ピンマイク、ヘッドセットなど色々なタイプがあります。

可能なら、スライドがどんな風に映るかも確認できると最高です。本番で感じる違和感を少しでも減らす。話す内容以外の不安要素をできる限り減らす。そのためには、とにかく早めに「場に慣れる」ようにしましょう。

本番前は「人に慣れる」

本番まであと少し。あなたの話を聞く人が会場に入ってきます。そこで心がけるのは、「人に慣れる」こと。

聞き手になる方に近づいてなるべく多く話をするようにしましょう。内容は、プレゼンの中身に関わること以外でかまいません。たわいもない話や今日の天候のことでも大丈夫です。こうしておくと、いざプレゼンが始まったときに緊張しても、直前に話していた人に視線を送れば、さっき話した安心感から少し落ち着けます。

できれば、あなたが提案しようと思っていることに関する、皆さんの声のようなもの聞き出せればベスト。プレゼンの最中に「さっき○○さんが仰っていたことなのですが」などと紹介できるので、ライブ感のある話題として話せます。

プレゼンの立ち上がりはゆったりと

さあ、プレゼンが始まりました。最初の挨拶・自己紹介などはつい焦って早口になりがち。まずは自分でも「ためすぎかな」と思うくらい、しっかり間をとって話し始めてください。それでなくてもプレゼンでは後半に行くほど、慣れもあってスピードが上がっていくものです。いきなりつっかえたり言い間違えたりすると、それだけで焦りが増します。立ち上がりはゆったりと、を心がけてください。

反応がない時は、ひとり一人に語り掛ける

始まって3分くらいは誰でも緊張します。その主な原因は、聞いている人の反応のなさや視線の冷たさです。でも、気にしないで大丈夫。自分が聞き手になったときのことを想像してみてください。最初は、話し手がどんな人なのか観察しますよね。それが反応のなさとして彼らの表情に現れるのです。

それでも、相手の反応が少なくて焦る場合はどうするか。

めげずに、とにかくひとり一人に語り掛けるようにしましょう。最初はうなずいてくれている人を見て話します。次に、少し離れたところにいる、反応は薄いけどこちらをしっかり見ている人に。次は、難しい顔をしている人に。会場の全員の目を一度はしっかり見るつもりで話しかけてみてください。地道に語り掛けていると、必ず聞き手の反応は変わってきます。聞き手をおいてけぼりにするようなマシンガントークはできないはずです。

ここまでは、プレゼンの本番の基本です。次回は、プレゼンをどう見せるか、どうひきつけるかの上級テクニックをご紹介しますね。

この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。

本番であがらない方法はありませんか?というご質問をよくいただきます。正直言って、そんな方法は仲間の間でも聞いたことがありません。話しやすい環境を事前にできるだけ整えておく。それをやりきっていれば「これだけやったんだからダメでも仕方ない」と開き直れるはずです。当日は、上記のような「慣れ」るような工夫をすることでかなり楽になるはずです。緊張に怯える暇があったら、準備と慣れ。これですよ。
 
松本和也松本和也(まつもと・かずや) / 音声表現コンサルタント・ナレーター・司会・ファシリテーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」「NHKスペシャル(多数)」「大河ドラマ『北条時宗』・木曜時代劇『陽炎の辻1/2/3』」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況に加え、報道番組のキャスターなどアナウンサーとしてあらゆるジャンルの仕事を経験した。株式会社 青二プロダクション所属

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