第35回「話す練習は2段階で」

プレゼンテーション練習

プレゼンテーションの前に「話す練習」はしていますか?一度通しでしゃべって時間を計ってみるくらいでしょうか?

それでは残念ながら十分とは言えません。

伝わるプレゼンのためにはどこに気をつけて練習したらいいのか、お話しします。

話す練習、2つの段階

話す練習は2つの段階を経ることをお勧めします。最初は個人練習。次が、仲間に見てもらっての本番を想定した練習です。時間がない!なんて言わないでくださいね。ここをちゃんとやっていないと、どんなに優れた資料などを作ったとしてもうまくいかないですよ。

まず個人練習のポイントからです。

録画は必ずしましょう。画質は問いません。スマホでも、あなたの話している姿とスライドが同時に見えれば十分です。

録音でもいいと思われるかもしれませんが、そうではありません。音だけ聞いていたら問題のないプレゼンでも、例えばあなたの話す姿がずっとスライドや手元のメモを読み上げているとしたら、どうでしょう。聞き手をひきつけることが難しいことは、録画を見れば一目瞭然です。

他にも、話す内容とスライドの切り替えのタイミングが合っているかなども、動画でなければわからないチェックポイントです。

次は時間配分をチェックします。

大切なのは、話す内容のパートごとにラップタイムを計ること。トータルの時間を計るのは当然ですが、もし時間が長過ぎた場合、どこを削るかはパートごとの時間を計っておくと、削らなければいけない部分を客観的に判断する際の参考になります。

そして、最も大切なのは、練習だと思わず目の前に聴衆がいると思って、全力で話しかけるようにすることです。そうしないと、ただ声に出しただけで相手に届く話し方の練習にはならないからです。
全力で話そうとすると、長すぎたり言い回しが難しかったりする話しにくい表現の部分がハッキリわかってきます。そこはその都度話しやすい言い方に修正します。

リハーサルで大切なポイント

ある程度、話せるようになったら、ようやく職場の同僚などを集めてのリハーサルです。

個人練習をそこそこにして、いきなり人前でリハーサルをしてもほぼ意味がありません。

なぜならフィードバックが「言葉がつっかえていた」「熱意が伝わってこなかった」など、伝える上での基本的な内容で終わってしまうからです。

聞いているクライアントは理解できるのか、心を動かされるメッセージになっているのかなどの最も重要なことを議論するのがリハーサルの目的です。必ず個人練習で、話す内容はメモを見なくてもある程度話せる段階までにしておきましょう。

リハーサルで大切なのは、具体的なフィードバックを返してもらうよう事前にお願いしておくことです。

何も言わないと、たいていの場合「全体的には良かったんじゃない」「もう少し抑揚を出したほうがいいよ」など当たり障りはないけれど、具体的にどう改善していいかわかりにくいフィードバックが返って来がちだからです。

前提は、「聞こうという意識が低い」相手を想定すること。その上で「話すスピードや論理展開など、必死で聞かなくても理解できるものになっていたか」「長い、ややこしい、退屈など聞き手が離れるような場面はあったか」という2つのポイントを意識すること。それぞれ具体的にどこが、という点を、話し方とスライドの両面で忌憚なく明確に指摘してほしいこと。これらを同僚の皆さんに伝えるようにするのです。

ダメ出しから見えてくるプレゼンの欠点

そこまでやるの?と思われたかもしれません。

実は、私がいた放送の世界では同じような場面があります。それは、VTRを編集したら必ず行う「試写」という段階です。

そこではできあがったVTRを見ながら、プロデューサー、ディレクター、アナウンサーなどあらゆる立場の人から、ほぼ忖度なしにダメ出しが行われます。自分が編集した番組をぼろくそに言われるのは本当に気が滅入ります。それでも、そうした指摘の中から、自分では全く気づいていなかった説明不足なところなど、大きな穴が見つかるのです。

プレゼンは、聞き手のためにあるもの。そのためにはどんなに耳の痛い指摘も聞く。そんな姿勢でリハーサルができれば、素晴らしいプレゼンになるはずですよ。

この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。

松本和也松本和也(まつもと・かずや) / 音声表現コンサルタント・ナレーター・司会・ファシリテーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」「NHKスペシャル(多数)」「大河ドラマ『北条時宗』・木曜時代劇『陽炎の辻1/2/3』」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況に加え、報道番組のキャスターなどアナウンサーとしてあらゆるジャンルの仕事を経験した。株式会社 青二プロダクション所属

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