第34回「コメントとスライドの作り方」

パワーポイント

プレゼンテーションの骨組み=ストーリー構成が完成したら、いよいよ具体的なコメント作り、さらにスライド作りに入っていきます。

最初は骨組みに従って、まずは原稿を書くようにしましょう。

コメントを書くときのポイントは2つ。「見出しや概要から始め、その後に細かいことへ言及していくこと」「とにかく文章を短くすること」です。ここまでの連載でふれたことの復習もかねてご紹介しますね。

原稿作りのカギはシンプルな「構成と文章」

一つ目の「見出しや概要から始め、その後細かいことへ言及していく」方法は、新聞やテレビのニュースの書き方を参考にしましょう。記事の概要、詳しい内容の説明、今後の見通しなど補足情報の順です。

「これから提案する内容の概要です。~を解決するものです。これまでの課題は~でした。この提案で~のようなことが実現できます。詳細をご説明します。~」のように、まずはプレゼンで伝えたい内容の全体像をシンプルに聞き手に伝えられない限り、細かいデータや根拠をしっかりと理解してもらうことは、難しくなります。聞き手の理解を追い越してどんどん説明することのないように、気を配るようにしてください。

二つ目の「文章を短くする」ことは、わかりやすい話しことばにする上で、最も大切なことです。この連載でも何度もふれてきましたね。プレゼンのコメントを作る時には、一文を書き終えたら、その文をゆっくり話して、一息で読めるかを確認してください。息が持たないようなら、文が長い証拠。いくつかの文に分けて説明するようにしましょう。

複雑な内容だとなかなか難しいかもしれませんが、プレゼンはわかってもらってなんぼです。数回前にご紹介した、「述語をなるべく早く言う」「体言止めを使う」などの方法を試しながら、短い文を作ることを心がけてくださいね。

あなたのことばが主、スライドは従

お待たせしました、いよいよスライド作りです。デザインの仕方などは、ネットの記事や様々な本が出ていますので、そちらを参考になさってください。私からお伝えしたいのは、スライドは「話すことをわかりやすく伝えるために使う演出」だということ。あくまであなたの話が最優先です。

スライドは、音声で聞こえる言葉に比べ、聞き手の関心を引き寄せる力が強いものです。

スライドが出ると、聞き手は何が書いてあるのか、理解しようとします。そのスライドに文字や図表がびっしり詰まっていると、どうでしょう。見る気がしないですよね。仮にそれを読んでくれたとしても、聞こえてくるあなたの言葉とスライドの情報がシンクロしていない場合、あるいはあなたの話がスライドのどこを話しているのかわからない時は、もっと悲惨です。聞き手にストレスを与えるプレゼンになってしまいます。

あなたが話した言葉や情報の中で、ちゃんと記憶に残してほしいもの。それだけをスライドに出す意識でのぞむことをお勧めします。

またスライドを出すタイミングも重要です。これから話すことがスライドに書かれていると、聞き手はそれを先に読んでしまい、あなたがその部分を話した時には、聞き手はその話を知っていることになります。それを避けるためにも、使い過ぎはよくありませんが、あなたの話に合わせ、アニメーションを使って文字が浮かび上がるようにする演出も取り入れてみてください。

次回は、いよいよ話す練習の仕方です。お楽しみに。

この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。

文字やデータがびっしり入ったスライド、ご覧になった方も多いと思います。私はあまり好きではないのですが、中にはびっしり中身が詰まったスライド出ないと許せないという人もいます。そうした方の言い分は、「よく調べられている、中身が詰まっていると思われないと説得力がないから」ということが多いです。書き物のレポートとしてはそれでいいと思います。プレゼンテーションは話して伝えるもの。そのあたりの意識が全く欠けている方が思ったより多いことに驚きます。しゃべりは二の次、手元資料の充実度だけで判断する文化が長年にわたって日本に根付いてきたからなのかなと思います。書き物優先主義の文化を変えないことにはプレゼンスキルの向上はない。私の仮説です。
 
松本和也松本和也(まつもと・かずや) / 音声表現コンサルタント・ナレーター・司会・ファシリテーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」「NHKスペシャル(多数)」「大河ドラマ『北条時宗』・木曜時代劇『陽炎の辻1/2/3』」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況に加え、報道番組のキャスターなどアナウンサーとしてあらゆるジャンルの仕事を経験した。株式会社 青二プロダクション所属

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