第33回「ビジネスの現場で求められるプレゼンのストーリー作りとは?」

プレゼンテーション

前回は、いきなりスライドは作らず、とりあえず言いたいことを全て書き出してみる、というところまでお話ししました。

今回は、プレゼンテーションで最も大切な部分、話の組み立て=ストーリー作りです。

ビジネスではTEDの真似はしないほうが無難

ストーリーというと、世界的な講演会「TED」のようなプレゼンテーションをイメージされる方も、多いと思います。私のお客様でも、あんな風にやってみたいという方は、少なくありません。確かにかっこいいですよね。でも実際のビジネスの現場でのプレゼンには、向かない気がします。

TEDは18分という時間の中で、自分の得意分野や経験を語ることから始め、そこから導き出された普遍的なアイデアを提示し、聴衆の行動の変化を促す、という形が多いです。ビジネスでは、前段の「自分語り」の部分が、時にまどろっこしかったりして、聞いている人が「で、本題は?」と思う場合が考えられるからです。

ほかにも、ずばり、Steve Jobsのマネをしたいという人もいます。ステージを自然に歩きながら、時に観客とかけあいをし、期待が高まったところで、画期的な製品をスタイリッシュに発表する。うーん、かっこいいですよね。気持ちはわかりますが、いきなりカリスマのスタイルを目指すのは、空回りにつながる恐れがあると言わざるを得ません。

ビジネスプレゼンで大切なのは明快な「骨組み」

ビジネスの現場で大切な要素は、時間です。どれだけ短時間で聞き手を納得させられるかが勝負です。

「エレベーターピッチ」というプレゼンをご存じの方も多いと思います。エレベーターに乗り合わせた上長に30秒ほどのプレゼンをして、意思決定してもらう早業です。プレゼンのストーリーの組み方は無限にありますが、どんなプレゼンでも「骨組み」は30秒(厳密でなくてよいのですが)で言えるくらいにシンプルにしておくことが大切です。

他社とのコンペなどのプレゼンでは、「自社の概要・実績・ビジョン」などをまずはとうとうと語りたい、という方もいます。しかし、多くの聞き手が関心があるのは、提案そのものであることがほとんど。最初にカットすべきはそうした「自分語りの要素」です。

骨組みに最低限必要な4要素

では、骨組みに最低限必要な要素はなんでしょうか。私は次の4つだと考えています。

「提案概要を一言で」「どんな課題を解決できるのか」「コスト(時間・費用など)は」「得られる効果・ベネフィットは」。これだけで十分でしょう。

与えられた時間が長くなれば、それぞれの要素を裏付けるデータや自社をとりまく環境、そして説得力を増すために何より大切な具体例、などを盛り込んでいけば良いのです。

前回に作成した「言いたいことを書き出したリスト」ですが、決してそれを全部言おうとしてはいけません。なるべくたくさん言いたいと思った時、伝えたいメッセージはぼやけてしまいます。

本当に伝えたいことは何か、徹底的に吟味し、勇気を持って不要なものをカットして、まずは「骨組み」を作ることに集中しましょう。骨組みができたら、原稿を書いていきます。

次回は、スライドと話しことばをうまく連動させることで、聞き手を引きつける形に近づけていく方法をご紹介します。

この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。

多くの人のプレゼンを聞いていて、私がよく聞く質問があります。それは「この部分の話、必要ですか?」というものです。それに対する答えは「うーん、確かにそうですねぇ。一応、入れておいたんですが」であることが多いです。この「一応」をなくすこと。これこそが説得力のカギになります。余計な内容を省くこと、余計な言葉をなくすこと。これができれば、プレゼンはほぼ成功していると言えると思います。
松本和也松本和也(まつもと・かずや) / 音声表現コンサルタント・ナレーター・司会・ファシリテーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」「NHKスペシャル(多数)」「大河ドラマ『北条時宗』・木曜時代劇『陽炎の辻1/2/3』」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況に加え、報道番組のキャスターなどアナウンサーとしてあらゆるジャンルの仕事を経験した。株式会社 青二プロダクション所属

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