第18回「聞き上手だけでは仕事はできない」

話を聞く

ビジネス関連お仕事以外に、お医者さんや看護師さんなど医療関係者の方に講演をすることが多くあります。そんな講演が終わった後、このような質問をよくいただきます。

それは、「なかなか終わらない患者さんのよもやま話をどうやったら止めることができるか」というものです。

確かに、患者さんの話を聞いてあげると言うことは、お医者さんや看護師さんに対して心を開いてもらうために、非常に大切なことです。しかしそれも程度問題で、ずっと話を聞き続けていると、いつまでたっても治療に必要な患者さんの情報を聞き出せず、時間ばかりが過ぎていく。結果的にほかの患者さんを長く待たせることになってしまうというのです。

お医者さんとしても治療に関係ない患者の話は聞かず淡々と治療のことについて専念すればいいようなものですが、それだと患者に冷たい医者だとクレームを言われかねず、それは避けたいわけです。では、どうすればよいのでしょうか。

当然ですが、私にはシビアな医療の現場の経験はありません。一方で、生放送の限られた時間の中での一般の方へのインタビュー(NHKのど自慢など)の場数は踏んできました。その時に使っていたノウハウがいかせるのではと皆さんにお話ししました。

話の主導権を取り戻すタイミング

まず相手の話を聞く。ここまでは同じです。ただしずっと聞くのではなく、相手の話の途中でうまく割り込み、主導権をこちらに取り戻すようにします。大切なのは割り込むタイミングです。

私の割り込むタイミングは、相手の話の中で「こんなに大変だった」「こんなに嬉しかった」と言うような話をして私に同意を求める部分が来たときです。そこで素早く割り込むようにします。

ただ割り込むだけではありません。「そうだったんですか。それは大変でしたね~。」「うわぁ、それはよかったですね~」など大げさなくらい、「共感していること」を伝えるのです。

そして相手が「この人はわかってくれたんだ」と感じてくれた顔をしたら、その瞬間に「そうそう、私からも大事なことを聞かせてもらっていいですか?今日はどこが調子が良くないんですか?」などこちらから質問をして主導権をとるのです。

チャンスは一瞬です。そこを逃して相手が次の話を始めてしまうと、しばらくは止めるタイミングは来ません。相手の話に耳を傾けながら、ここが盛り上がりどころだ、ここでピリオドが打てそうだ、という部分をしっかり聞き分けることに集中するのです。

相手が話を止めてくれない時は

それでも止まってくれないときにはどうするか。そのときは、正直に自分が困っていることを正直に相手に伝えるのです。「もっと聞いていたいんだけど、あとの人も待っているのでね。次にお会いしたときに聞かせてくれます?ごめんなさいね。」と丁寧に心を込めて話せば、私の経験では、相手の方はいったんは自分の話を中断してくれました。

このような相手の話が止まらない状況は、医療現場だけではなく取引先との雑談や上司との話などでも起こりえます。「あなたの話を時間や都合の許す限りしっかりと聞こうとしている」ことを言葉や表情を総動員して相手に伝えられるかどうか。大切なのはこの一点だと思っています。

この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。

どうやったら相手の終わらない話を止められるかというご相談は、コロナ禍でオンライン会議が当たり前になった2020年夏頃から急速に増えてきました。実際に対面して会議ができた以前に比べると、オンラインだとそうした会話の微妙な間合いが皆で共有することが難しいのが原因のようです。いわゆる「その場の空気」が感じにくいんですよね。会議の進行は、ここというタイミングを見計らい、音声で、時にはカメラに向かって手を振るなどジェスチャーで伝える必要も出てきます。オンラインが当たり前の時代こそ、全力で伝える意識が必要になりそうな気がします。

松本和也松本和也(まつもと・かずや) / 音声表現コンサルタント・ナレーター・司会・ファシリテーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」「NHKスペシャル(多数)」「大河ドラマ『北条時宗』・木曜時代劇『陽炎の辻1/2/3』」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況に加え、報道番組のキャスターなどアナウンサーとしてあらゆるジャンルの仕事を経験した。株式会社 青二プロダクション所属

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