第16回「キレのあるしゃべりのカギ!効果絶大!『ポン出し』」

ポン出しの法則

自分では一生懸命話しているつもりなのに、なぜか聞いている人には平板に聞こえる。

こんなお悩みを持っている方も多いのではないでしょうか?

話を平板に聞かせてしまう「聞かせないほうが良い音」

大きな原因の一つは、聞いている人に「余計な音」を聞かせてしまっていることです。「えーと」「あのー」「まぁ」などの無意識に出てしまうつなぎの言葉は、そんな「余計な音」の代表です。

実はそれ以外にも、聞いている人に「聞かせないほうが良い音」があるのです。それは、文の切れ目や言葉の切れ目など「無駄に言葉尻を強調すること」です。

幼稚園、もしくは小学1年生くらいの頃、こんな風に言っていませんでしたか?

せん「せー」、さよーな「らっ」、みな「さん」。このカギ括弧でくくった部分がちょうど文の切れ目=言葉尻になっていて、そこを強く発音=強調していましたよね。これが「言葉尻の強調」です。

子供たちだとかわいいのですが、大人が同じように言ったとしたら、どうでしょう。ちょっと気持ち悪いですよね。

気持ち悪さの原因は、特に重要でもない言葉である言葉尻を強調しているからです。意味のない部分の強調。これを頻発されると、聞いている方は聞きにくさを感じてしまうのです。

みなさんも知らず知らずのうちにやってしまっているはずです。例えばこんな文章。

今日「はっ」、お忙しいとこ「ろっ」、お越しくださいまし「てっ」、ありがとうござい「ます」。

いかがでしょうか?これ、普段の会話の中で聞いている分には特に気にならないと思います。

しかし、人前でプレゼンやスピーチなどまとまった話をしている人が、こうした言葉尻を強調する話し方をしていると、聞いている人の耳には「はっ」「ろっ」「てっ」「ます」という言葉尻ばかりが残ってしまい、肝心の内容が今ひとつ伝わらない恐れがあります。

政治家の答弁が理解しづらいワケ

また、言葉尻の「音を伸ばす」のも同じようにノイズになります。政治家の答弁を思い出していただくとイメージしやすいと思います。

今日はっ「あー」お忙しいところっ「おー」お越しくださいましてっ「えー」。。。

えー、などと音を伸ばしている間に考えながら話しているんですよね。しかし聞いているほうは余計な音を連続して聞かされると、理解の邪魔になったり、眠くなります。

聞かせたくない音が出るの防ぐ!「ポン出し」

では、こうした癖はどうすれば治るのか?

私のオススメは、最初の音を「軽く」「高めに(明るめに)」「ポン!と」出す方法。題して「ポン出し」です。

まずはやってみましょう。カギカッコ部分を軽く高めにポン!と出してみてください。あとの文はその勢いだけで話して結構です。

「きょ」うは、「お」忙しい中、「お」越しくださいまして、、、。

どうですか、言葉尻は?強く言ったり、伸びたりしないでしょう?こうすることで、情報性のない言葉尻を強調することは避けられます。

しかもことばの最初の部分がよく相手に聞こえるようになるため、「きょう」「お忙しい」「お越しください」など情報性のある部分がしっかり伝わるようになるのです。

この「ポン出し」、私のところにトレーニングにお越しになる方に伝えると、最初は半信半疑の反応をされる方がほとんどです。

しかし、実際にやっていただくと皆さんその効果に驚かれます。ぜひ、あなたも試してみてくださいね。

この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。

このポン出し、できる人は一瞬でできる。苦手な人は苦労するという本当にやっかいなテクニックなんです。だってプロのアナウンサーでも、できていない人が多い話し方だからです。ただ言えるのは、落語家さん、お笑い芸人の方、役者さんなどはしっかりできている方がほとんど。やはり、言葉をちゃんと伝えなければ仕事にならない人は違うなぁと思います。(アナウンサーは・・・あれ?)口幅ったいのですが、私のYouTubeチャンネルをのぞいていただければ、私の話し方の大部分は「ポン出し」で話しています。よろしければそこでイメージをつかんでくださいね。

松本和也松本和也(まつもと・かずや) / 音声表現コンサルタント・ナレーター・司会・ファシリテーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」「NHKスペシャル(多数)」「大河ドラマ『北条時宗』・木曜時代劇『陽炎の辻1/2/3』」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況に加え、報道番組のキャスターなどアナウンサーとしてあらゆるジャンルの仕事を経験した。株式会社 青二プロダクション所属

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