今回は、普段会話するときに心がけると良いテクニックです。
それは、「自分がずっと話し続けない」ということ。自分ばかり話さず、時には相手に話の主導権を譲り、聞き役に回ることの大切さは、皆さんよくご存じだと思います。
自分で展開できない時にどうする?
サッカーでは、ボールが回ってきた時に自分で突破できないとみたら、自分でボールを持ちすぎず、他の選手に早くパスを回すのが良いと言われています。
同じように、自分でぐいぐい聞き手を引っ張っていけるだけの話の展開が望めないのなら、「あなたはどうですか?」などと単純に会話の主導権を渡すほうが、会話はスムーズに進んでいきます。
実は、この「話のボールを持ちすぎない」方法は、一方的に話すことが多いプレゼンテーションなどでも使えるのです。
熱意は感じられるが話が伝わらない人
プレゼンテーションをする時、話さなくてはいけないことがたくさんあって、時間いっぱいに内容を詰め込んでしまったことはないでしょうか?私は日頃数多くのプレゼンテーションの指導を行っていますが、そんな人をよく見ます。
もちろん熱意は感じられていいんです。しかし、そのわりに話が相手に伝わりにくくなっていることも残念ながら多くあります。理由は簡単。そんな話し方だと聞いている側が疲れるのです。
のべつ幕なしに延々説明を聞かされてしまうと、話に取り残されないよう集中しなくてはいけない時間が長く続きます。聞いている立場からすると、「どんなにいい話でもちょっと休ませてもらえないかな」と思うもの。もし、ずっと話を聞いているのは苦にならないという人がいるとしたら、相手の話を適当に流しながら聞いているのかも。。。
話す内容を減らさず、相手に伝わる方法
とはいえ、言いたい内容はなるべく減らしたくない。その上で聞き手にも少し休み時間を作ってあげたい。どうすればいいのか?私のお勧めは、しゃべりの「壁パス」です。
壁パスというのは、出し手から来たボールを、受け手が壁のようになってダイレクトで出し手に返すパスのこと。相手ディフェンスを瞬時に突破できるシンプルな方法です。これを話し方に応用するのです。
方法は、「聞き手に話を少しだけふる」。ただそれだけです。
実は、少し前の文章でその手法を使っています。それは「どうすればいいのか?」という部分。この部分がなかったとしたら、「言いたい内容はなるべく減らしたくない。その上で聞き手にも少し休み時間を作ってあげたい。私のお勧めは、しゃべりの「壁パス」です。壁パスというのは…」と延々説明が続くことになります。
この中に「どうすればいいのか?」という短い問いかけを入れることで、聞き手に一瞬でも自分で考える時間が与えられます。これがちょうどいい休みになるのです。
聞き手に問いかけという「言葉のパス」を一瞬出す。聞き手が考えるのを少しだけ待った上で、自分でその答えを言う。こうすることで「話のボールを取り返す」のです。
これを使えば、ずっとしゃべり続けてしまうという、「話のボールを持ちすぎ」状態を防ぐことができるのです。 「聞き手に話を少しだけふる」方法は、プレゼンだけでなくスピーチなど様々な場面で応用可能です。思いついたら色んなところで試してみてください。
この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。