プレゼンテーションをする場合、結論→根拠→具体例→今後の見通しなどの順に、並べていこうとする方も多いと思います。
社内の会議など情報を共有するくらいのプレゼンでしたら、その方法で十分です。というのも、事実関係やロジックがしっかりしていれば、社内の人なら普通はちゃんと聞いてもらえるからです。
しかし、社内でも大きな予算措置が必要なプロジェクトを立ち上げたり、お客様から大きな案件を受注しようというような場合、それでは足りないこともあります。相手の重い腰を上げさせる、気持ちを動かすだけの力強さがプレゼンには求められます。
そんなときに参考にしていただきたいのが、テレビ番組での情報の伝え方です。
「この先を見たい!」と思わせるテレビ番組の工夫
多様な視聴者が想定されるテレビでは、誰にでもわかりやすい説明をすることはもちろん、「面白そう」「あるある!」「この先を見たい」などと思わせるための様々な工夫をしています。
例えば、夏休みにオススメの観光スポットを紹介する番組。そんな番組では、いきなり場所の紹介をすることはありません。「視聴者の共感を高める」ことから始めます。「暑い夏は目の前!行ってみたいところはたくさんあるけど、どこも混雑!しかもお値段も高い!」などとあおった後、「解決策の提示」です。「そんなあなたにこそオススメしたいスポットがあるんです!」と言ってから、具体的な場所とその魅力を紹介していきます。たいていの情報番組は、おおよそこんな流れで作られています。
テレビショッピングは、こうした視聴者を引きつけるプレゼンが、さらに徹底されています。中でも「ジャパネットたかた」のCMは、プレゼンの一つの見本になるという話は、お聞きになったこともあると思います。およそ5分のプレゼンの流れは、おおよそこうです。今日は○○をご紹介します。→今は~の時期、こんなことにお困りではないですか→そんなときに役立つのが○○→なんとこんなこともできるんです!→気になるのはお値段。なんと~円!→さらに今なら○○もおつけして~円!こんな感じですね。
プレゼンに取り入れるべき「聞き手の気持ちをリードする構成」
もちろんプレゼンの目的や商材が違う場合、このフォーマットをそのままプレゼンに活かしてください、というつもりはありません。私が言いたいのは、ビジネスでのプレゼンにも、こうした「聞き手の気持ちをリードしていく構成」を取り入れていっても良いのではないかということです。
仕事で多くのプレゼンを見ていますが、最初に書いたような「結論→根拠→具体例→今後の見通し」の順になっているのは、まだ無駄がないだけ良い方です。実際に多いプレゼンは、「自分が言いたいことを、好きに話してしまう」ものです。
例えば、自己紹介や自社の実績、あるいは背景となる情報などリサーチ結果を、延々と話す。MECE意識するあまり、論理の隙を突かれないよう防御戦を張りまくる。こうした内容は、プレゼンター本人にとって必要なものかも知れませんが、聞いている方にとっては退屈です。聞きたいのはあくまで本題。そしてその本題を「聞きたい」と思わせる工夫を盛り込むのを忘れないようにしてくださいね。
この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。