第25回「番組作りの手法をプレゼンテーションにいかす」

テレビ番組

プレゼンテーションをする場合、結論→根拠→具体例→今後の見通しなどの順に、並べていこうとする方も多いと思います。

社内の会議など情報を共有するくらいのプレゼンでしたら、その方法で十分です。というのも、事実関係やロジックがしっかりしていれば、社内の人なら普通はちゃんと聞いてもらえるからです。

しかし、社内でも大きな予算措置が必要なプロジェクトを立ち上げたり、お客様から大きな案件を受注しようというような場合、それでは足りないこともあります。相手の重い腰を上げさせる、気持ちを動かすだけの力強さがプレゼンには求められます。

そんなときに参考にしていただきたいのが、テレビ番組での情報の伝え方です。

「この先を見たい!」と思わせるテレビ番組の工夫

多様な視聴者が想定されるテレビでは、誰にでもわかりやすい説明をすることはもちろん、「面白そう」「あるある!」「この先を見たい」などと思わせるための様々な工夫をしています。

例えば、夏休みにオススメの観光スポットを紹介する番組。そんな番組では、いきなり場所の紹介をすることはありません。「視聴者の共感を高める」ことから始めます。「暑い夏は目の前!行ってみたいところはたくさんあるけど、どこも混雑!しかもお値段も高い!」などとあおった後、「解決策の提示」です。「そんなあなたにこそオススメしたいスポットがあるんです!」と言ってから、具体的な場所とその魅力を紹介していきます。たいていの情報番組は、おおよそこんな流れで作られています。

テレビショッピングは、こうした視聴者を引きつけるプレゼンが、さらに徹底されています。中でも「ジャパネットたかた」のCMは、プレゼンの一つの見本になるという話は、お聞きになったこともあると思います。およそ5分のプレゼンの流れは、おおよそこうです。今日は○○をご紹介します。→今は~の時期、こんなことにお困りではないですか→そんなときに役立つのが○○→なんとこんなこともできるんです!→気になるのはお値段。なんと~円!→さらに今なら○○もおつけして~円!こんな感じですね。

プレゼンに取り入れるべき「聞き手の気持ちをリードする構成」

もちろんプレゼンの目的や商材が違う場合、このフォーマットをそのままプレゼンに活かしてください、というつもりはありません。私が言いたいのは、ビジネスでのプレゼンにも、こうした「聞き手の気持ちをリードしていく構成」を取り入れていっても良いのではないかということです。

仕事で多くのプレゼンを見ていますが、最初に書いたような「結論→根拠→具体例→今後の見通し」の順になっているのは、まだ無駄がないだけ良い方です。実際に多いプレゼンは、「自分が言いたいことを、好きに話してしまう」ものです。

例えば、自己紹介や自社の実績、あるいは背景となる情報などリサーチ結果を、延々と話す。MECE意識するあまり、論理の隙を突かれないよう防御戦を張りまくる。こうした内容は、プレゼンター本人にとって必要なものかも知れませんが、聞いている方にとっては退屈です。聞きたいのはあくまで本題。そしてその本題を「聞きたい」と思わせる工夫を盛り込むのを忘れないようにしてくださいね。

この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。

聞き手の気持ちを、最初にぐっと引きつける。お笑いでいうところの「つかみ」ですね。私は、高校に入ってすぐバンドを組んでボーカルを担当したときに、このつかみの重要性に目覚めました。文化祭で他の多くのバンドと共演するのですが、おしゃれな長髪をなびかせたメンバーが揃う他のバンドと違い、ボーカルの私は野球部だったので丸坊主。とてもロックには見えません。演奏中はまだしも、曲の合間は全く絵になりません。とにかくMCは面白いものにしなければ!そう思ったのが、しゃべりに対する意識が上がったきっかけだった気がします。聞き手に最後まで聞いてもらえるように意識を!という私には、こんな止むに止まれぬ事情があったのです。。。ちょっと悲しい歴史でした。

松本和也松本和也(まつもと・かずや) / 音声表現コンサルタント・ナレーター・司会・ファシリテーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」「NHKスペシャル(多数)」「大河ドラマ『北条時宗』・木曜時代劇『陽炎の辻1/2/3』」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況に加え、報道番組のキャスターなどアナウンサーとしてあらゆるジャンルの仕事を経験した。株式会社 青二プロダクション所属

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