これからの季節、新しい任地に旅立つ方の送別会、新人などを迎える歓迎会が待っているという方も多いと思います。
そこで今回は、そうした場面で必ずやってくる「一言ご挨拶を」といわれたときの乗り切り方をお伝えしますね。
スピーチのコツは、本題を早めに話す
まず、最初のコツは「いろいろ話そうとしないこと」。
例えば、結婚式のスピーチで、両家へのお祝い、今日の天候、前に行われたスピーチの感想、参列者がいかに素晴らしいか、自分がどれだけ緊張しているか、といったことを長々としゃべっている人、見たことありませんか?そんなとき、「で、肝心の新郎新婦の話はいつになったら出てくるの?」なんて思ったことはないでしょうか?
スピーチでも挨拶でも、何より大切なのは「長くならない」ことです。まず、「本題を早めに話す」ことを心がけてください。
では「本題」はなにか?送別会でしたら、ほぼ決まっています。「ありがとう。次の任地でも頑張って。」この2点です。
シンプルに考えれば、内容がどうであろうと「ありがとうございました。これからも(体に気をつけて)頑張ってください」と言えば、とりあえず格好がつくのです。ここさえ忘れなければ、とりあえず何が言いたいかわからない挨拶にはなりません。
エピソードは、その人らしい具体的な場面を話す
次に考えるのは、この結びの言葉に行く前の「送られる方のエピソード」です。ポイントは、「その人らしいなぁ」と思えるような具体的な話をすること。「○○さんは、すごく頼りがいもあって、仕事もよくでき、家庭的で。。。」など誰でも言えることをたくさん並べるのも悪くはないのですが、聞いた人の心に残る挨拶にはなりません。その人が持っている様々な長所の中で、一番心に残るものを一つ絞り込むのです。
例えば、「頼りがいがある」という点に絞ったとします。次に考えるのは「この人頼れるなぁ」とあなたが思った場面を具体的に思い出すのです。「2年前自分がこの部署に入ったばかりで戸惑っていたときに、○○さんがそっと助けてくれたっけ。最初は取っつきにくかったなぁ。でも得意先とのトラブルがあったとき。。。」という風に思い出が出てきたら、しめたもの。その中で一番いいところを具体的に(その時に実際に話したセリフ、表情などを)描写するのです。
うまく聞かせるコツは、最初にテーマを言うこと。「○○さんにはお世話になりました。本当に頼りがいのある人です。こんなことがありました。」と、聞いている人に、「これからこんな話が始まるんだな」と心の準備をさせると期待も高まります。
話の余韻は、終わり方で生まれる
最後のポイントは、「終わり方はさっぱりと」です。例えば、「私が得意先に叱責されていると、○○さんが『指示をしたのは私です。大変申し訳ありません』と大きな声で謝罪してくれた。取引先はその気迫に押されてそれ以上何も言わなかった」など、かっこいい場面を話したら、それ以上長々と話してはいけません。「○○さん、あのときは本当に嬉しかったです。ありがとうございました。」などと「さっと終わる」のです。すると、話の余韻が生まれ、聞いている人の心に届きます。
「はなはだ簡単ではありますが、私の送別の辞と…」など紋切り型をやめるだけでも、独自性は出せますよ。
この記事は、2019年1月から12月まで週刊東洋経済に連載したコラム「必ず伝わる最強の話術」に 加筆修正を加えたものです。
タイトルこそ「送別会スピーチの乗り切り方」ですが、ここで書いていることはスピーチに限らず、プレゼンなど人前で話すとき全てに言えることだと思っています。とにかく、余計なことを省くこと。余計なことの代表が、本題に入る前の前置き。紋切り型のいいまわし。あなたでなくても誰でも言える話、などです。とにかく、今日のテーマをできるだけ早く言うだけでもテンポはよくなり、聞いている人を引きつけることができます。聞いている人はフルコースを食べに来たお客さんではありません。ファストフードを食べに来ていると思って、少しでも早くおいしいものを提供してあげるようにしましょう。